『独立猿人』
“ロックンロールの所有権”は若者だけのモノだと思ってた。10代の頃、親への反抗、学校への反抗、社会への不満、それをぶつけるだけでロックだった。いや、ロックっぽかった。怒れる若者の特権で、歳をとれば怒る矛先もなく、そそくさと引退するものだと。でも違った。“ロックンロールの所有権”は、自分が想い続ける限り永久にあるのだ。
30代を経て、40代になった時、僕には歌いたいテーマが山ほど出てきた。それは等身大の自分をさらけ出すという、あたり前のことだった。そして今ほど自分が“ロックンロール”してると思う時期はない。
こういう作品をここ数年作る中で、ある日埼玉の入間の小さなカフェでライブをやった後、同年代ぐらいの男の人が子供連れてやってきてこう言った。「こういう音楽をもっと僕の世代に聴いて欲しい」と。自分があたり前に作ってきたのものは、なるほど世間ではまったく歌われてない類のものであり、アウトサイドなものなのかもしれない。
ふと、想像してみる。電車に乗ったサラリーマンがイヤフォンから、僕の音楽が流れ、忘れてた感情が押し寄せ、涙を流してるシーンを。ライブハウスに、大の大人達が仕事帰りに押し寄せ、ビールを飲みながら、笑顔になって、時に泣いて、そして、明日へ向かって歩いて帰る姿を。
『独立猿人』は寺岡呼人の“ロックンロールアルバム”です。
寺岡呼人
『The Independent ape-man』
呼人氏に出逢ってからまだ一年しか経っていないと思うのだが、最近はすっかり同僚かってくらい一緒に時間を過ごしている。思えば今年の正月に川崎大師で引いた御神籤の「交友」の欄に、「金玉の如き友を得て己も磨かれるべし」と書かれていたのであった。念の為に言っておくが「きんたま」ではなく「きんぎょく」である。まぁ「きんたまの友」も中々悪くは無いなと思うのだが。
さて、最初に呼人氏から「僕のアルバムの共同プロデューサーになってくれませんか?」と言われた時には、「貴方は日本でも屈指の音楽プロデューサーじゃありませんでしたっけ?」と正直思ったものである。しかし同世代という事もあってか、持ってる問題意識やテーマに共通点が見つかる事が多く、これは今しか出来ない仕事なのではないかと思うようになっていった。その中で僕らの世代が持つ共通意識って何なのだろうと考えていった時、僕らより以前の世代と比べて共有している物がとても希薄なんだって事に気づいてしまった。そして決定的に子供っぽい世代であるという事にも。
そこでふたりが辿り着いたテーマは「自分たちで大人になろう」という事だった。40代というどっちつかずな場所に立っている不安と正面から闘ってる姿を、真っ裸にして曝け出すという方法に挑む事にしたのであった。なにせ余りにも毎日電車が人身事故(という名の自殺)で止まる事に凄く嫌な感じを持っていた。その電車を止めているのは40代が一番多いという事にも。だから僕らの世代がアレルギーを持っている「共闘意識」みたいなものが現在の僕らに必要なんじゃないか? そして今なら違うカタチでそいつを持つ事が出来るんじゃないか? などと40代の金玉(きんたま)の友ふたりは思ったのである。多分に大風呂敷的なのではあるが。
奇しくも呼人氏は今年独立して個人事務所を構えたのであった。社名はなんとロックンロールの名曲から「モンキービジネス」。社名としては甚だしく不適切なスラングではあるが、僕はそこからヒントを得てアルバムタイトルの「独立猿人」を思いついた。「直立」ではなく「独立」である。社会への独立二足歩行に挑む氏の姿に陰ながらエールを送りつつ、僕も全力を傾けてこのアルバムに思いを注いでみた。自身の内なるインデペンデンスの為にも。
素っ裸で立った猿人の「オトナ宣言」に耳を傾けて頂けたら、後に続く世代にも、先を行く世代にも、これが僕ら40代の独立戦争の宣言なのだと分かってもらえると思う。今はまだ小さな声かも知れないが、やがて大きなうねりを呼んで行くような予感が既に僕の胸の裡に宿っている。
To prove this, let Facts be submitted to a candid world. ~Thomas Jefferson~
共同プロデューサー、作詞家 山田ひろし



